生活保護の引っ越し費用はどこまで出る?主な3つの費用と敷金等が支給される18のケース、申請の流れ

住まい・家賃 / 公的支援 11min

生活保護で引っ越し費用が出るのは「やむを得ない転居」のとき

生活保護を受けていても、引っ越しそのものはできます。大阪市は、住む場所は住宅扶助の上限の範囲で、原則として本人の意思が尊重されると回答しています。

ただし、支給要件は費用ごとに異なります。敷金等は、厚生労働省の通知で示された18のケースのいずれかに該当し、実際に敷金等を必要とする場合が対象です。荷造費・運搬費は別の規定により、「真にやむを得ない」転居で、福祉事務所が事前に承認した必要最小限度の額が対象になります。

敷金等が支給される18のケース

厚生労働省の通知は、「転居に際し、敷金等を必要とする場合」として次の18のケースを示しています(保護の実施要領の取扱い 第7 問30)。いずれかに該当するだけで自動的に支給されるわけではなく、敷金等を必要とすることや転居先の家賃なども確認されます。

No.支給の対象になる転居(要約)
1入院していた方が、福祉事務所の指導で退院するときに帰る住まいがない
2福祉事務所の指導で、今より家賃の安い住まいに移る
3土地収用法や都市計画法などにより、立ち退きを強制された
4退職などで社宅や寮を出る
5社会福祉施設などを退所するときに帰る住まいがない(入所の目的を達した場合)
6無料低額宿泊所などから、アパートなどでの生活に移る
7今の住まいで、部屋の提供以外のサービスの強要や高すぎる共益費の請求など、不当な扱いを受けている
8職場から遠く通勤が難しく、職場の近くに移ることが自立に特に役立つ
9火災などの災害で、住まいがなくなった、または住めなくなった
10老朽化や破損で、住めない状態になった
11住まいが著しく狭い、または劣悪で、明らかに住めない
12病気療養のうえで環境が著しく悪い、または高齢者や身体障害者がいて設備や構造が合わない
13住まいがなく、親戚や知人の家に一時的に身を寄せていた
14家主から相当の理由で立ち退きを求められた、または契約の更新を断られた
15離婚(事実婚の解消を含む)で、新しい住まいが必要になった
16高齢者や身体障害者などが日常的な介護を受けるため、扶養義務者の住居の近くに移る。または、双方が生活保護受給者で、扶養義務者が日常的な介護のため本人の住居の近くに移る
17本人の状態等を踏まえ、グループホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの適切な法定施設に、やむを得ず入居する
18犯罪の被害や、同じ世帯の人からの暴力から身を守るため、新たに住まいを借りる

自分がどれに当たるのかわからなくても、心配しすぎなくて大丈夫です。当てはまるかを判断するのは福祉事務所なので、まずは事情をそのまま担当のケースワーカーに伝えてください。

自己都合の引っ越しは原則自己負担になる

問30の18のケースに当たらない自己都合の転居では、敷金等は原則として支給されません。また、荷造費・運搬費も「真にやむを得ない」転居と認められなければ支給対象になりません。「もっと広い部屋に住みたい」「この街に住みたい」といった希望だけを理由とする転居は、費用を自分で用意するのが基本です。

また、転居先の家賃が住宅扶助の上限を超えると、超えた分を生活費から払い続けることになる場合があります。部屋を決める前に、家賃の上限を確認しておきましょう。

支給を受けるには引っ越し前の申請が必要

いちばん気をつけたいのは手続きの順番です。大阪市は、転居費用を保護費から出すには、事前の申請と福祉事務所の決定が必要だと説明しています。事前の手続きがないと、支給できないか、支給の範囲が限られることがあるとしています。

引っ越し代についても、通知は福祉事務所が「事前に承認した」額を認めるとしています。部屋の契約や業者への申し込みは、承認を受けてから進めてください。

支給対象になりうる引っ越し費用は主に3つ

制度上、すべてが一つの「引っ越し費用」という同じ費目で支給されるわけではありません。この記事では、転居時に支給対象になりうる主な費用を、①敷金等、②荷造費・運搬費、③家具什器費の3つに分けて整理します。支給要件や上限はそれぞれ異なります。

敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用

新しい部屋を借りるときの敷金は、住宅扶助の「敷金等」として支給されます。通知では、権利金、礼金、不動産手数料、火災保険料、保証料も、やむを得ない場合は認めてよいとされています(第7 問35)。

支給の条件は、転居先の家賃が住宅扶助の特別基準額以内であることです。家賃が基準を超える部屋を選ぶと、初期費用も支給されない場合があります。

荷造りと運搬の費用

引っ越し業者に払う荷造りや運搬の費用は、生活扶助の「移送費」として扱われます。通知は、真にやむを得ない転居の場合に、福祉事務所が事前に承認した必要最小限度の額を認めるとしています。

必要最小限度の額なので、複数の業者の見積もりを比べて、安いほうを選ぶよう求められることが多いです。荷造りや荷ほどきを業者に任せるオプションは、認められない場合があります。

家具や家電の費用が出るのは限られた場合

家具や家電の購入費(家具什器費)は、引っ越しのたびに出るものではありません。転居の場合は、新旧の住まいの設備が違うために今の家具や器具が使えず、買い足す必要があるときに限られます。

額は36,700円以内で、真にやむを得ない場合は58,400円以内です(2026年10月時点の通知)。暴力から逃れるための転居で、家具の持ち合わせがない場合も対象になります。

支給されにくい費用

通知が敷金等として挙げているのは、敷金、権利金、礼金、不動産手数料、火災保険料、保証料です。これ以外の費用は、保護費から出ないか、自治体によって扱いが異なります。

・鍵の交換費用

・前の部屋の原状回復やハウスクリーニングの費用

・荷造りや家電の取り付けなどのオプション作業

・自己都合の引っ越しにかかる費用

見積書の項目が支給の対象になるかは、契約の前にケースワーカーに確認しておくと安心です。

引っ越し費用の上限と、戻ってきたお金の扱い

費用が支給される場合でも、上限があります。また、前の部屋から戻ってくるお金がある場合は、その扱いも決まっています。

敷金等の上限は原則「特別基準額×3」

敷金等の上限は、原則として住宅扶助の「特別基準額」に3を掛けた額です(局長通知 第7-4-(1)-カ)。ここでいう特別基準額は、世帯人員別の通常の限度額では対応しにくい場合に、単身世帯の限度額へ世帯人数に応じた率を掛けて算出する額です。

世帯人数1人2人3人4人5人6人7人以上
率1.31.41.51.61.71.71.8

計算式は原則として「特別基準額×3」です。なお、地域の住宅事情などから3倍では対応が難しい場合に、厚生労働省との協議等を経て4倍額や5倍額の特別基準が設定される例もあります。大阪市では2025年、敷金等の上限額設定の誤りにより支給不足が生じていたことを公表し、その後、厚生労働省通知に従って不足分を支給しています。

正確な上限額は地域と世帯で変わるので、お住まいの福祉事務所に確認してください。

前の部屋の敷金が戻ったとき・立退料が出たとき

前の部屋の敷金が返ってきた場合、そのお金は受け取った月以降の収入として扱われます。福祉事務所の指導で引っ越した場合は、返ってきた敷金を新しい部屋の敷金に充ててよいとされています(第7 問31)。

家主から立退料が出た場合、大阪市は、まず転居費用に充て、余った分は返還を求めると回答しています。受け取ったお金は隠さず、ケースワーカーに伝えてください。

月の途中で引っ越すときの家賃

月の途中で引っ越すと、前の部屋と新しい部屋の家賃が同じ月に重なることがあります。真にやむを得ない転居であれば、それぞれ1ヶ月分の家賃を基準額の範囲で認めてよいとされています(局長通知 第7-4-(1)-ウ)。

退去日と入居日の決め方も、ケースワーカーと相談しておくと安心です。

生活保護で引っ越すときの手続きの流れ

手続きの順番を守れば、「費用が出なかった」という事態は防ぎやすくなります。おおまかな流れは次のとおりです。

・ケースワーカーに相談し、転居の必要性を認めてもらう

・家賃の上限内で部屋を探し、初期費用の内訳がわかる書面をもらう

・引っ越し業者の見積書を出し、承認を受けてから契約する

・引っ越し後、住所変更などの届出をする

ケースワーカーに相談し、転居の必要性を認めてもらう

最初に、担当のケースワーカーに引っ越したい理由を伝えましょう。家主からの通知や医師の意見など、事情がわかる書類があれば持っていくと良いです。

福祉事務所が転居の必要性を認めると、費用の支給に向けた手続きを行えます。

家賃の上限内で部屋を探し、契約内容がわかる書面をそろえる

家賃が上限を超えない部屋を探します。不動産会社には、生活保護を受けていることと家賃の上限を最初に伝えておくと、話が早く進みます。

候補が決まったら、契約の前に初期費用の内訳がわかる書面をもらいます。通知でも、敷金等を認めるときは契約内容が確認できる書面を審査するとされています(局長通知 第7-10-(3))。

引っ越し業者の見積書を出し、承認を受けてから契約する

引っ越し業者の見積書を取り、ケースワーカーに提出します。何社分の見積書が必要かは自治体によって違うので、事前に確認しておきましょう。

承認を受けたら、部屋の契約と業者への申し込みに進みます。費用がどのように支払われるかも、あわせて確認しておくと安心です。

別の市区町村に移るときの手続き

保護を担当する福祉事務所は、住んでいる地域で決まります。ほかの市区町村に引っ越すと担当の福祉事務所が変わるので、今のケースワーカーに引き継ぎの流れを確認してください。

支給を認められなかったときの相談先

福祉事務所の決定に納得できない場合は、審査請求という不服を申し立てる仕組みがあります。転居に伴う移送費などの却下について、審査請求が出された例も公表されています。

申し立ての期限や提出先は、通常、決定通知書に書かれています。ひとりで判断がつかないときは、法テラスや弁護士に相談しましょう。

生活保護を受けていない人が使える転居費用の補助(住居確保給付金)

生活保護を受けていない方で、収入が著しく減少し、家計を改善するために転居が必要と認められる場合は、住居確保給付金の「転居費用補助」が使える可能性があります。2025年4月に始まった制度です。

・対象:収入が著しく減少し、転居によって家賃負担などを軽減して家計を改善する必要がある方(収入・資産などの要件あり)

・対象の費用:家財の運搬費用、礼金、仲介手数料、家賃債務保証料、住宅保険料、ハウスクリーニングなどの原状回復費用、鍵交換費用など。敷金、前家賃、家具・家電などの購入費は対象外

・上限:転居先の市町村の生活保護法に基づく住宅扶助基準額に基づく額の3倍(これによりがたい場合は別に定める額。実費が上限より少なければ実費)

・窓口:お住まいの自治体の自立相談支援機関

生活保護を受給している方は、住居確保給付金の転居費用補助の対象外です。転居費用については、生活保護制度の支給要件に基づいて福祉事務所が個別に判断します。細かな要件や窓口の名称は自治体によって異なるため、申し込む前にお住まいの自治体へ確認してください。

携帯契約に困ったなら即モバ

引っ越しの手続きでは、電話でのやりとりが何度も発生します。ケースワーカーとの相談日程の調整、不動産会社からの物件の連絡、保証会社の審査に関する確認などです。

保証会社の審査では、申込者本人に確認の電話が入ることがあります。スマホが止まっている状態のままだと、せっかく見つけた部屋の手続きが進まないかもしれません。引っ越しの準備と並行して、連絡のつく番号を用意しておくと安心です。

即モバは、携帯電話会社で契約できなかった方でも申し込めるスマホ・SIMサービスです。本人確認は、セブン銀行「+Connect」または佐川急便受取人確認サポートのいずれかの方法を選べます。申し込み時点で電話番号を持っていない方には、案内ページに専用番号を用意。支払いはコンビニ払い(マイペイメント)またはクレジットカードから選べます。

詳しくは申し込みページをご確認ください。

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